私が農業をはじめるまで 第1回 野菜へのめざめ

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(以下は閉鎖された「みんなの挑戦日記」というブログで連載していたものを転記したものです)

今の私のうまいもん好きは学生だった福岡在住時代が大きく影響していると思う。ラーメン、モツ鍋、モツ焼き、水炊きと、いわゆる名物料理のレベルが高いのはみなさんご存知の通りだろうが、スーパーに売ってる魚介類のレベルもとても高い。特にお刺身レベルはとても高く、あじやぶり、生さば(酢でシメない)などの青魚と生牡蠣とサザエがまぐろスペースを狭くしているさまは関東のスーパーにもぜひ見習っていただきたい愛すべき光景である。

加えて学生時代のバイト先がブルーノートという世界的に有名な高級ジャズライブハウスだったため、フランス料理が身近で、佐賀牛やシャラン鴨、フォアグラ、オマール海老といった高級食材に触れる機会が学生のくせに多かった。暇な時は世界の料理という分厚い本を開いてシェフと雑談をし、好きなアーティストの時は客席へ出ていき「やっぱ、リチャード・ボナが一番だね」などと同僚とのたまうおおらかな日々。

こうした日々が今のうまいもん好きの基礎を作ったのだと思う。それに加えて次に住んだ金沢も魚介やら蟹やらうまいもん満載。休日や飲みに行く時などは、次はどこ行って魚食べようか?次はどこで肉食べようか?そんなことばかり考えていた。

そう、学生時代からずっと、うまいもんといえば肉か魚だったのだ。この店に行くまでは。

忘れもしない社会人1年目の2005年冬、会社の同期で親友、農業にやたら詳しい上垣くん(彼は私がドロップアウトするずっと前に会社を辞めてライターをしている)が「友達が来るから一緒に行かないか」とフランス料理のお店に誘ってくれた。のちに親しくさせていただく室矢シェフが腕を振るっていたお店ル・クリマである(室矢シェフが離れてからはフレンチではなくなったようなのでご注意を)。テーブルに着くなり上垣くんがひとこと。

「今日は野菜だけのディナーっていうのを用意してもらったから」

「え?えぇ!?」

まず、この時点で意味がわからない。フレンチといえばほら、前菜、スープときて、魚、肉のメイン料理が1皿ずつというのが定石じゃない。それが魚も肉もないってどういうこと?そんなのおいしいの?

しばらくすると、出てくる出てくる知らない野菜の数々。
ビーツ、根セロリ、紅芯大根、黒大根、リーキ(ほかにもいっぱいあったが覚えきれず)
10品近くひとつの野菜をフィーチャーした渾身の料理が出てきた。

「なにこれ?」「野菜なの?」「こんないっぱい種類あるの?」「大根ってこんな味するの?」

もう疑問の応酬。未知との遭遇。ワンダーランド。
このワンダーランドから私の野菜人生が始まったのである。

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